産業/色彩の話
6. 測光量

 前項では、明るさ \(L\) という量をあまり明確に定義せずに使いましたので、ここで少しはっきりさせておきたいと思います。何度も繰り返しているように色彩はあくまで人間の眼の感覚です。ここで言う \(L\) も実はこの人間の眼が感じる量として定義され、測光量とも言われます。

 これに対して人間の感覚とは関係のない客観的な量(物理量)があります。光源から放射される光の明るさ、強さを表す物理量は放射エネルギー(パワー)です。単位で言えばワット(W)あるいはジュール(J)です。この物理量に人間の眼の波長に依存する感度をかけたものが測光量に相当します。人間の眼はたかだか380nmから780nmの範囲のいわゆる可視光の波長範囲にしか感度をもたず、しかもこの感度はこの波長範囲内で一定ではなく強く波長に依存する特性をもっています。

 この眼の感度の波長依存性は図6-1のようになっています。もちろん個人差があるので、これは平均的なものです。ピーク値を1とするように規格化されたものを標準比視感度と呼んでいます。ピークは波長が555nmのところにあります。人間の眼は緑色にもっとも高い感度をもち、赤や青では感度が落ちます。なお、この視感度は周囲が明るいときと暗いときで変化することが知られています。図は明るいときのデータで、明所標準比視感度とも呼ばれます。

 測光量 \(L\) は光源から光の放射エネルギー(物理量)が \(P \left ( \lambda \right )\) で比視感度が \(V\left ( \lambda \right )\) とすると、    \[L=K\int_{\lambda }V\left ( \lambda \right )P\left ( \lambda \right )\mathrm{d}\lambda\] と表されます。ここで \(K\) は定数で、エネルギーと測光量の単位の組み合わせによって決まります。

 測光量の基礎となる量は「光束」です。この光束の単位はルーメン(lm)です。エネルギー \(P\) の単位をWとすると、\(K\) の値は683(lm/W)になります。測光量の単位にはこの他に光度(単位:カンデラ(cd)=lm/sr)があります。これは立体角(ステラジアン、sr)あたりの光束と定義されます。また光が照射された面の面積あたりの明るさには照度が使われます。単位はルクス\(\left ( lx \right )=\mathrm{lm}/\mathrm{m}^2\) です。同様に光度を面積あたりにした量を輝度といいます。これの単位には特別の名前はないようで、\(\mathrm{lm}/\mathrm{sr}\cdot \mathrm{m}^2 \) あるいは \(\mathrm{cd}/\mathrm{m}^2 \) が単位となります。