電子デバイス/バイポーラトランジスタ
7.バイポーラトランジスタの記号と基本的な回路
バイポーラトランジスタの記号はよく知られていると思いますが、図7-1のようなものです。短い線分に直角に交わっている線がベース電極で、斜めに交わっている2つの線のうち矢印がついているのがエミッタ、残りの1本がコレクタです。エミッタの矢印は電流の方向を表し、npnトランジスタはエミッタから電子が流れ込むので、電流はその逆方向になりますから、外向きの矢印です。pnpトランジスタでは電流が流れ込む方向ですから内向きの矢印で表されます。
以前は丸で囲んだ記号も使われていましたが、現在の国際規格とそれに準拠したJISでは図のように定められているはずです(JIS C 0617)。5項、6項の回路をこの記号を使って示すと、図7-2のようになります。
トランジスタはデバイスそのものの理解も重要ですが、それだけでは使いこなすことはできません。どうしてもトランジスタの特性を生かす回路の理解が必要です。しかしここでは回路の問題に深入りすることはせず、基本的な話に留めます。
図7-2(a)の回路はベースが各電極の電位の基準になっていますから、ベース接地回路と呼ばれます。電位の基準という意味で「接地」というのは分かりやすいですが、別に接地には限らないので、外国ではコモン(共通)という語が使われます。この場合はベース・コモンの回路です。
図7-2(b)の回路はエミッタが電位の基準になっているので、エミッタ接地回路、またはエミッタ・コモンの回路と呼ばれます。この回路はバイポーラトランジスタの増幅回路としてもっとも普通に使われています。
図7-2は実際に使われる回路図とは少しちがっています。図7-3に通常使われる回路図を示します。
まず実際には電源として2種類の電池を使うのは部品点数が多くなるので好ましくありません。そこで単一の電源VCCを使い、これと違う電圧が必要な場合は抵抗で分圧して使うようにします。図中のR1とR2はこの分圧のための抵抗器です。
いずれの場合もベース-エミッタ間の電位差は一定に保つ必要があり、これが図7-2のVEに相当します。これに対して交流またはパルスの入力信号を入れる場合、その信号の基準電位をエミッタまたはベースの電位に合わせる必要があります。しかしこれは回路的に複雑になってしまうため、通常は図のようにコンデンサCを挿入して信号は変化分だけを入力するようにします。出力側にも必要ならコンデンサを入れます。