科学・基礎/半導体物理学

22.周期ポテンシャル

 これまで自由電子モデルにおいて2種類の境界条件のもとでシュレディンガー方程式の解を紹介しました。しかしポテンシャルエネルギーが一定(ゼロ)という自由電子モデルは原子が規則的に並んでいる結晶内の仮定としては実情とかけ離れているように思われます。また前項の巡回境界条件のように波動関数の境界条件だけ周期的であるというのも片手落ちの気がします。

 そこでポテンシャルエネルギーが周期的であるというモデルがつぎに考えるべきものとなります。本来3次元で考えるべきですが、ここでは簡単化するために1次元で考えます。ポテンシャルエネルギー \(V(x)\) が周期 \(d\) をもっているとすると、    \[V\left ( x + d \right )= V\left ( x \right )\tag{1}\] と書けます。イメージ的には図22-1のようなものになるでしょう。

 シュレディンガーの方程式は依然として1電子モデルで扱います。    \[\frac{\mathrm{d}^{2} \varphi }{\mathrm{d} x^{2}} + \frac{2m}{\hbar^{2}}\left [ E-V\left ( x \right ) \right ]\varphi = 0\tag{2}\]

 ポテンシャルエネルギーが周期的なら、電子が存在する確率も同じ周期をもっていると考えてよいでしょう。    \[\left | \varphi \left ( x + d \right ) \right |^{2}= \left | \varphi \left ( x \right ) \right |^{2}\tag{3}\]

 また波動関数の境界条件も前項同様の巡回境界条件を使うのが妥当と思われます。    \[\varphi \left ( x \right )= \varphi \left ( x + d \right )\tag{4}\]

 ところで(3)式が成り立つと    \[\varphi \left ( x + d \right )= \lambda \varphi \left ( x \right )=\left | \lambda \right |^{2}= 1\tag{5}\] でなければなりません。同様にして    \[\varphi \left ( x + 2d \right )= \lambda \varphi \left ( x+d \right )= \lambda ^{2}\varphi \left ( x \right )\] などとなりますから、これをさらに延長し、\(g\) を正の整数とすると、    \[\varphi \left ( x + gd \right )= \lambda ^{g}\varphi \left ( x \right )\tag{6}\] となることがわかると思います。

 結晶の長さが \(L\) でそのなかに \(N\) 個の原子があるとすると、    \[L= \left ( N-1 \right )d\] ですから、\(g\) の最大値は \(N-1\) と言え、このとき(6)式は    \[\varphi \left ( x + \left ( N-1 \right ) d\right )= \lambda ^{N-1}\varphi \left ( x \right )\tag{7}\] とも書けます。このため    \[\lambda ^{\left ( N-1 \right )}= 1\tag{8}\] でなければならないことになります。これをオイラーの公式を思い出して解くと    \[\lambda= \mathrm{e}^{2\pi gi/\left ( N-1 \right )}\] となります。ただし \(g= 0,\pm 1,\pm 2,\cdots\)です。

 これを(5)式に代入すると、    \[\varphi \left ( x + d \right )= \mathrm{e}^{2\pi gi/\left ( N-1 \right )}\varphi \left ( x \right )\tag{9}\] という関係が得られます。

 さてここで \(u_{k}\left ( x \right )\) という周期 \(d\) の周期関数を考え、    \[\varphi \left ( x \right )= u_{k}\left ( x \right )\mathrm{e}^{ikx}\tag{10}\]    \[k= \frac{2\pi g}{d\left (N-1 \right )}\tag{11}\] とおいてみます。

 これらの関係を(9)式に入れると、    \[\varphi \left ( x + d \right )= \mathrm{e}^{ik\left ( x + d \right )}u_{k}\left ( x + d \right )\]    \[= \mathrm{e}^{ikd}\mathrm{e}^{ikx}u_{k}\left ( x \right )= \mathrm{e}^{2\pi gi/\left ( N-1 \right )}\varphi \left ( x \right )\] となり、(10)、(11)式の関係が(9)式を満たしていることがわかります。

 以上より、周期ポテンシャルがあると、波動関数は必ず(10)式の形をとることがわかります(これは3次元の場合にも拡張できます)。これをブロッホ(Bloch)の定理といい、(10)式の関数をブロッホ関数と呼ぶことがあります。

 (10)式の \(\mathrm{e}^{ikx}\) の形は自由電子モデルの波動関数として出てきた関数でしたが、周期ポテンシャルがある場合はこれに周期関数をかけた形になるというのが、ここで得られた結論です。