光デバイス/受光素子

12.アバランシェフォトダイオードの構造

 アバランシェフォトダイオード(APD)は前項で説明した通り、pn接合に高い逆バイアスをかけたときに生じる電子雪崩を利用するのが特徴です。言い換えればpinフォトダイオード(pinPD)に高い電圧をかけて電子雪崩をおこさせればAPDとして動作するということになります。ということはpinPDとAPDは素子の構造としては同じでよく、電圧の条件だけを変えればよいと言えます。

 しかし高い電圧をかけて使うということはやはり問題が起きやすくなります。このような問題を避けるために素子構造もいろいろ工夫されています。ここではそのAPD特有の構造について基本的なところを紹介します。

 pinPDのところでも説明した通り、フォトダイオードの感度をよくするためには十分光を吸収できるように空乏層を厚くすることが必要です。この点はAPDも同じです。しかしpin構造でi層が厚いと、そこに高電界をかけるためには高い電圧が必要になります。<電界>=<電圧>÷<層の厚み>ですから、層の厚みが倍になると同じ電界を保つためには電圧を倍にしなければなりません。

 半導体デバイスを使った回路はせいぜい5Vとか3Vとかの電源で動作しますから、APDだけに何100Vも必要となると電源回路が複雑になりよくありません。できるだけ低い電源電圧で使えるようにしたいという要求が当然出てきます。

 この要求に応えるための素子構造として考えられたのが、リーチスルー型と呼ばれるもので、基本的な考え方は電子雪崩を起こす部分と光を吸収する部分を分けるというものです。

 この考え方が最初に提案されたのがいつなのかはっきりしませんが、1970年代にいろいろな構造が検討されています。もっとも基本的な構造は図12-1(a)のようなものです(1)。接合の構造をみると、上からn/p/p/pとなっています。キャリア濃度の位置による変化はおおよそ同図(b)のようになります。

 この構造は普通のpin構造に比べるとp層が追加されています。こうすることによって素子内の電界分布がどうなるかを大雑把に示したのが同図(c)です。p層にもっとも大きな電界がかかり、p層にやや低い一定の電界がかかっています。

 この構造に逆バイアス電圧をかけると、pn接合はn/p接合のところだけですから、電界はp層に集中してかかります(n層はキャリア濃度の高いので電界はほとんどかかりません)。このときp層に続くp層にも空乏層が広がれば、p層には電荷がほとんどないので、図のように一様な電界がかかります。ただし必ずp層全体に空乏層が広がり、全体に電界がかかるという保証はありません。これは接合の設計によります。このようにある逆バイアスをかけたときにp層全体に空乏層が広がることをリーチスルーと呼んでいます。

 リーチ(reach)は到達するという意味で、空乏層が端まで届くことを示しています。スルー(through)は通り抜けるという意味で、キャリアが空乏層を通り抜けるということです。逆バイアスが十分でないと空乏層が端まで広がらず、p層の途中で電界がほとんど0になってしまいます。こうなるとキャリアが通り抜け難くなり、うまくありません。このリーチスルーの状態をつくることはpin構造でも必要です。

 p層で発生した電子は電界に沿って移動しp層に入ります。そしてp層の高電界で加速され原子と衝突を起こします。これによりp層内で電子雪崩が発生しキャリアの数が急増することになります。以上のような構造とすれば、p層で光を吸収して電子-正孔対を作り、電界の大きいp層で電子雪崩を発生させるという役割分担ができます。

 このようにすれば電界は主としてp層にかかるので、全体に高い電圧をかける必要がなくなります。p層を厚くして光が十分吸収されるようにし、かつリーチスルーの状態が実現するようにすれば、感度、応答速度を両立させることができます。

 ここでもう一つ問題があります。高い電界のかかるp層は角の部分に高い電界が集中してかかりやすくなります。電子雪崩を起こす必要があるのは底の平らな部分で、ここに高電界が必要です。しかし端の角部の電界が高くなってしまい、ここで破壊が起きてしまうと困ります。

 この対策としてよく用いられる手段は7項で示した例のように、接合の角になる部分をふくらませたような形にして曲率を大きくし急な曲がりにならないようにすることです。これによって高い電界集中の発生を防ぐことができます。

(1)特開昭50-153595号

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