電子デバイス/絶縁ゲート電界効果トランジスタ

15.CMOS素子の作り方(3、IGFET主要部の作製)

 図13-1(再掲)の(d)以降のIGFET主要部を作る工程は、最後の金属電極を作るところを除くと、これまで説明してきた、SiO膜の形成、フォトリソグラフィによるSiO膜の穴開け、p型またはn型不純物の拡散の繰り返しになります。

 (d)では(b)でp型領域に不純物を導入する際、マスクとして使ったSiO膜を一旦、フッ化水素酸で取り除きます。そして改めてシリコン基板表面を熱酸化してSiO膜を付けます。これが(d)です。

 つぎにpチャンネルIGFET(図の右側)を作るためにソースとドレイン部分をp型にします。このためにその部分のSiO膜に穴を開けます。この穴開けのためにはまたフォトリソグラフィの一連の工程(フォトレジスト塗布、焼成、フォトマスクを用いて露光、現像、SiO膜のエッチング)が必要です。

 この後、開けた穴からp型不純物を熱拡散します。このソース、ドレイン領域は半導体の抵抗率を低くして金属電極との間で電流がよく流れるようにする必要があるので、不純物は(b)で形成したp型領域のときよりも濃度を高くします(pと言う場合があります)。前項で説明したイオン注入を用いてもよいですが、不純物濃度が高くそれほど濃度を正確にコントロールしなくてよい、このような場合は、熱拡散の方が向いています。

 熱拡散の場合、酸素を入れることが多いので、通常、拡散後に表面は酸化されてSiO膜ができます。これが薄いSiO膜で、図の(e)はここまでが終わった状態を示しています。

 つぎに(f)です。今度は左側のp型領域の中にnチャンネルIGFETを作るためのソース、ドレイン領域を作ります。このため、同じようにフォトリソグラフィでSiO膜に穴を開けます。このとき重要なのは間違いなく穴がp型領域の中になるように位置を決めなければいけないことです。そのためにはこのとき使うフォトマスクを当てる位置に注意が必要です。普通は基板とフォトマスクに何か目印を付けておき、これの位置を合わせればよいようにしておきます。人がやるのならば顕微鏡で基板とマスクのマークを見ながら位置を調整しますが、大量生産の工場ではステッパという装置が自動的に位置合わせを行います。

 今度は穴を通してn型不純物を拡散しソース、ドレイン領域を作ります。以上で(f)までが終わりました。

 最後にゲート電極部分を作らなければなりません。そのため、IGFETとなる部分のSiO膜を除去して穴を開けます。ゲート絶縁膜は以前に説明したようにIGFETの特性を不安定にする要因を作りますから、クリーンで良質なSiO膜にする必要があります。拡散のマスクとして使ったSiO膜を流用するようなことは普通はしません。また拡散用のマスクはある程度厚い必要がありますが、ゲート絶縁膜は静電容量の関係で薄い方がよいです。そこで改めて穴からシリコン基板が露出した部分をナトリウムなどが混入しないように注意して熱酸化しゲート絶縁膜用のSiO膜を作り直します。

 なお、トランジスタの機能には関係のない部分のシリコン基板表面は通常、絶縁膜で覆っておきます。これを保護膜とかパッシベーション膜と言うことがあります。半導体表面は活性で酸素や水分があれば室温でも徐々に反応が進んで変化します。これが長い時間経った後にトランジスタの性能を変化させる恐れもあります。また半導体表面に配線のワイヤなどが触れると動作に異常が起こったりすることも考えられます。そこで半導体表面は絶縁膜で覆っておくのが普通です。(g)ではゲート部分以外では以前に付いていたSiO膜を残してパッシベーション膜としています。

 さて最後に電極金属を付けるのが(h)の工程です。これもIGFETの作製では重要な工程ですので、次項で詳しく説明することにします。