電子デバイス/バイポーラトランジスタ

3.バイポーラトランジスタ中の電子の動き

 バイポーラトランジスタはpn接合を2つ重ねたpnp型またはnpn型の2通りがあります。電流の流れる方向は逆になりますが、はたらきはどちらでも基本的には同じです。

 どうしてこのような構造が考えられたのでしょうか。それは恐らく3極真空管やIGFETと共通した発想があると思われます。どこが共通かと言うと、電子をマイナス極からプラス極に向かって走らせ(あるいは飛ばし)、それを途中でコントロールしようという発想です。

 例えばnpn構造の場合、n型半導体の両側に電極を着けて電圧をかけると電子が電極の間を走行しますが、n型半導体のなかにp型半導体を挟み、これを使って走っている電子をコントロールしようというわけです。

 ところで最初に「pn接合を2つ重ねた」と言いましたが、pn接合には1方向にしか電流を流さない整流作用があります。n側をマイナス、p側をプラスにすると電流が流れますが、逆にすると電流は流れません。

 n型半導体の両側に電極を付けただけならば、半導体内に接合はなく、ただの抵抗器になりますから電流は流れます(半導体と電極金属の間でも整流作用が起こる場合がありますが、それは防ぐことができます)。しかし間にp型層が入ると、npとpnという方向が逆のpn接合が重ねられることになり、両側のn型半導体にプラスとマイナスを繋ぐと、どちらか一方のpn接合では電流が流れないように思われます。

 しかし実際には流れる流れないの白黒どちらかではありません。とくにn型半導体中の電子の濃度が高いと多少逆方向に電圧がかかっていても電子はp型層内に溢れるようにして流れ込みます。これを拡散電流と言います。

 無色の水に絵の具などで色を付けた水を一滴たらし、放置しておくと、とくにかき混ぜたりしないでも色水は全体に広がって最初にどこにたらしたか分からなくなってしまいます。これが拡散という現象で、電子もどこかに濃い部分があると一様に広がろうという性質があります。ただ電子の場合は色水とちがって電荷をもっているので、強い電界がかかると力を受けて移動(ドリフト(drift)ということがあります)しますから、拡散は打ち消されてしまいます。

 簡単な図を描いてまとめておきます。図3-1はnpn構造中の電位を示す図です。図の電位は左側のn型層がマイナス、右側のn型層がプラスの状態です。普通のイメージと上下が逆ですが、これはマイナスの電荷をもっている電子が上方から下方へ流れるように描く習慣のためです。

 さて左側のn型層中の電子濃度を高くしておくと、n型層とp型層の境界では電界は電子を左側に引き戻す方向にはたらいていますが、この電界(つまり電位の傾き)が小さければ拡散によって電子はp型層へ流れ込めます。

 一旦p型層に入った電子は、今度は右側のpn接合のやや強い電界に引かれてn型層へ流れます。これで電子は左側のn型層から右側のn型層へ、つまりマイナス極からプラス極へ流れることができることができます。そして真ん中のp型層の電位を調節してやれば、流れる電子の量を調整できそうなことも何となく想像できると思います。