産業/信頼性

22.まとめ

 半導体デバイスの信頼性はデバイスの進化によって次々に新しい課題に直面してきました。とくに集積回路は、その大規模化に伴う集積度の向上につれて、信頼性を確保するために従来の技術を変更せざるを得ない場合も生じました。

 例えば、チップ上の配線の線幅が非常に狭くなるにつれ、断線故障が起こりやすくなり、絶縁膜の膜厚が薄くなると、従来と異なるモードでの絶縁破壊が起こるようになりました。このような現象を解明するためには原子レベルにまで遡った解析が必要でした。今後もこのような傾向が続くと思われます。

 信頼性試験は方法、条件を揃えて行わないと、比較ができないため、標準化規格の整備に力が入れられています。このページでも取り上げたように新しい課題に対応した規格の新設や改訂がかなり頻繁に行われています。少し前に書かれた文献などでは、その後の改訂には当然対応していないので、注意が必要です。

 なお、このページではあまり多くの参考文献をあげていませんが、全般にわたって参照した文献がいくつかあるので、それをここであげておきます(1)(2)

 (1)は信頼性工学の全般をカバーする代表的な教科書と言えると思います。ただし出版年が1982年とかなり早いので、近年の半導体の諸課題は記されていません。「入門」となっていますが、内容は必ずしもいわゆる入門書ではなく、信頼性の数学的な扱いに必要な確率、統計の知識がある程度必要かと思われます。確率、統計の教科書は多々ありますが、初歩から立ち入った数学的な解析までを一冊で済ますのは難しいようです。

 (2)は旧、松下電子工業社が半導体デバイスの信頼性についてまとめた本で、実例も多く挙げられています。内外の半導体メーカー各社が信頼性について自社のポリシーを示すためにまとめた「信頼性ハンドブック」的資料は多く公表されています。ウェブ上にも公開されていることも多いので、複数社の考え方の違いを見比べることもできます。

(1)塩見弘「信頼性工学入門(改訂三版)」1982 丸善

(2)松下電子工業株式会社編 「半導体デバイスの信頼性技術」1988 日科技連