光デバイス/受光素子
7.pinフォトダイオードの構造
pinフォトダイオードはpin構造のダイオードですから、それほど多様な構造があるわけではなく、代表的なものとしては以下の図7-1と図7-2に示すような2種類があります(1)。
シリコン(Si)のフォトダイオードでは、受光する光の波長は0.8μm前後を対象とします。1μm以上の波長を対象とする化合物半導体のpinフォトダイオードの場合は少し構造がちがうこともありますが、基本的なところは同じです。
図7-1はメサ型と呼ばれるタイプです。図は接合の断面図ですが、側面が斜めに切り落とされた構造をしているのが特徴です。発光ダイオードなどでも同じような構造が使われています。電極の外側の半導体を切り落とすのは、外側に電流が広がって無駄になるのを防ぐのが目的です。発光素子では順方向に電圧をかけて大きな電流を流すので、無駄な電流を減らし発熱を抑えるのが目的ですが、受光素子の場合は逆バイアスをかけたとき、光が当たっていないのに電流が流れる(暗電流と言います)のを防ぐのが主な目的です。
この図の例では基板はp型のシリコンです。その上にi型のシリコン層をエピタキシャル成長させます。上層のn型層はi層の表面からリンを拡散して形成できますが、エピタクシャル成長してもよく、これでpin構造ができます。i層の不純物濃度は1013cm-3であるのに対し、n層は1019cm-3とすることができ、i層はn層に比べて6桁も不純物濃度が低くすることができます。
この半導体構造のn型層表面とp型基板の裏面に電極を着けてダイオードとします。表面電極は2箇所にあるように図では見えますが、これは環状になっている電極の断面を示していて、一つの電極です。フォトダイオードですから光が半導体に当たらなければならず、環状の電極にするのは光をできるだけ遮らないようにするためです。
環状電極の穴の開いた部分には反射防止膜を着けています。これはシリコンと空気の中間の屈折率をもった透明な誘電体層です。多層にすれば反射防止性能は向上します。またメサ構造の側面にはSiO2膜などの絶縁膜を着けています。接合側面が剥き出しになっているとその表面を伝わって電流が流れてしまうことがあり、それを防ぐのが目的です。
図7-2はプレーナ型と呼ばれるタイプです。多くの製品はこちらのタイプが使われていると思います。接合部分などほとんどの構造は図7-1と同じです。メサ構造を作らないので、その代わりに不純物濃度の高いp+層を環状電極の外側に設けています。n型層は電極の内側部分だけに作られていて、外側のi層表面にこのp+層を作ります。このp+層には電圧をかけるわけではありませんが、n層と逆の伝導型の層があるだけで、横方向に電流が流れるのを防ぎます。
このようなpin構造ではi層の不純物濃度と厚みを適切に選ぶことが重要です。不純物濃度は低いほど応答速度は速くなります。またi層の厚みは薄いほど応答速度は速くなります。
しかしi層の厚みはある程度厚い必要があります。これは5項でも説明していますが、i層内で光が十分に吸収されることによって、受光感度が高くなるからです。基本的にはi層の厚みを受光する光の波長での吸収係数の逆数以上にすればよいはずです。
シリコンの波長830nmでの吸収係数は約750cm-1であるので、その逆数の13μm以上の厚みがあればよいことになります。この場合に速い応答速度を確保するにはi層の不純物濃度が上記のように1013cm-3程度と十分低い必要があります。
(1)特開昭55-033031号
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