光デバイス/受光素子

1.はじめに

 受光素子とは何か、まず言葉について確認しておきましょう。「受光素子」は光を受ける素子と書きますが、もう少し明確に言うと光を受け電気に変換する素子の一種ということが言えます。

 光を受けて電気に変換する素子のもっとも一般的な呼び方は、そのものずばり光電変換素子でしょう。この言い方をすれば、原理などによらず、光を電気に変えるはたらきをもつ素子はすべて含まれます。

 ところで逆に電気を光に変える素子のことを何と呼ぶでしょうか。普通は発光素子です。電気を光に変えるからといって、電光変換素子という日本語はまず使いません。このため、電気を光に変換する素子も光電変換素子と呼んでいる場合がたまにあります。混同しないように注意が必要です。

 光検出器または光検知器という言葉もよく使われます。英語でよく使われるphoto-detector(フォトディテクタ)の訳語と思われます。これも原理によらず広く使え、光を検知するという機能をもった素子を指します。ただし光電変換素子のなかで、光を検知するのが目的でない素子は含みません。

 光を検知するのが目的でない光電変換素子などあるでしょうか。その例は太陽電池です。太陽電池も光を電気に変換することは同じですが、光を検知するのが目的でなく、エネルギーを得るのが目的です。このため太陽電池は光電変換素子の一種ですが、光検出器ではないということになります。

 それでは受光素子とは何を指す言葉でしょうか。文字通りに受け取れば、光を受ける素子なら何でも入ることになりますが、実際は半導体光検出器を指す言葉と考えていいようです。その代表はフォトダイオード(photodiode)です。フォトトランジスタ(15項)というものもあります。これらを含めたものを受光素子と呼ぶと考えてよいと思いますが、受光素子に直接対応する英語はないように思います。

 現在使われている受光素子のほとんどは半導体のpn接合を利用したものですが、それ以外の光検知の原理に簡単に触れておきます。半導体に光が当たって電子と正孔ができ、その場所に電界がかかっていれば電流が流れます。pn接合などの接合を用いてこの電界を作り込めるのが半導体の特徴ですが、接合を作らずに、外部からかける電界を使うこともできます。このとき流れる電流が光電流ですが、この光電流を測定すれば光が検知できます。光伝導効果というとこれを指し、光電セルなどという呼び方をする素子はこの原理を使ったものです。

 半導体以外では、光電効果を利用するものがあります。この光電効果は金属に光が当たると電子が空中に飛び出すという現象で、アインシュタインの光量子仮説の対象となった現象としてよく知られています。これはトランジスタと真空管のような関係で、半導体の応用ができるようになる前は光の検知といえば光電効果を利用した光電管が専ら使われていました。これの発展した光電子増倍管は現在でももっとも感度の高い光検知器として使われています。半導体素子ではないですが、重要ですので17項で取り上げます。

 ここではさらに半導体撮像素子を併せて取り上げることにします。半導体撮像素子はデジタルカメラに使用され、静止画像、動(ビデオ)画像を撮影するための素子です。外界の光を取り込み、電気信号に変える機能はまさに受光素子ですから、ここで取り上げる理由はあります。しかし撮像素子にとって重要な性能は、何百万画素といった大量の受光素子が捕らえた光信号を電気信号に変え、画像情報を形成するため高速で転送する機能にあります。このため受光素子単体の話というより多量の受光素子と電気信号の転送回路を集積化したところに特徴があります。このため集積回路素子の一種として取り上げる方が適当かも知れませんが、ここでは受光機能に着目して受光素子の部類として取り上げることにしました。