光デバイス/OLED

14.まとめ

 ここで取り上げた有機発光素子は有機ELではなく有機発光ダイオード(OLED)と呼ぶべきだと何度も言ってきましたが、異論もあるかと思います。しかし有機物を発光層として使った実用的な発光素子が実現したことは驚くべきことです。

 取り扱い方には少し迷いがありました。上記のような考え方からすれば発光ダイオードの構成材料を化合物半導体結晶から有機分子に変えた発光ダイオードの一種として扱うのがよいということになります。最初はこの考えでした。

 しかし、OLEDは化合物半導体を用いた発光素子とはかなり異なる特徴を持っています。理論の発展により、見かけ上は結晶半導体と同じように取り扱えるようになりましたが、本来、発光の原理はまったく異なります。また材料の特徴が異なるので、製造方法にかなり違った方法が採用できます。化合物半導体結晶層は密閉された系のなかで減圧状態で高温の基板上にエピタキシャル成長する必要があります。これに対して有機分子層の形成は同じような真空プロセスで作ることも可能ですが、大気中で塗布、印刷といった手段が使えます。また結晶成長ではないので、格子整合といった制約もなく、基板もかなり自由に選択できます。

 このように考えるとOLEDはやはり独立した発光素子として扱うのがよいと考えるようになり、このページを作成することにしました。

 OLEDは製法上の特徴から大面積、フレキシブル(可撓)な発光素子が実現可能と考えられます。もちろん周辺の電子回路には従来の素子が必要なので、発光層だけの特徴ですべてが解決するわけではありませんが、従来にない期待のできるデバイスと言えます。  課題はやはり信頼性にあると考えられます。ここではこの問題は取り上げませんでしたが、どういう問題があるのかあまり情報が多くないようです。耐熱性や化学的安定性などに材料ごとの問題があるように想像され、改良に今後注目していく必要があります。

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