光デバイス/光制御素子
<付録4>導波モード
13項で説明した光導波路(スラブ導波路に限定しましたが)の理論について、少し補足をします。
まず13項の(3)式を再掲します。ただし、\(E_y\) を含むTEモードに関する(1)~(3)式、\(B_y\) を含むTMモードに関する(4)~(6)式に並べ替えてあります。
\[\begin{align}-i\beta B_x &- \frac{\partial B_z}{\partial x} = i\omega\mu_0 \varepsilon_0 n^2 E_y \tag{1} \\ i\beta E_y &= -i\omega B_x \tag{2}\\ \frac{\partial E_y}{\partial x} &= -i\omega B_z \tag{3} \\-i\beta E_x &- \frac{\partial E_z}{\partial x} =-i\omega B_y \tag{4} \\i\beta B_y &= i\omega\mu_0\varepsilon_0 n^2 E_z \tag{5} \\ \frac{\partial B_y}{\partial x} &= i\omega\mu_0\varepsilon_0 n^2 E_z \tag{6} \end{align}\]
この6つの式はスラブ導波路中を伝搬する光(電磁波)の電界と磁束密度についてのマクスウェル方程式をそれぞれxyz成分に分解して示したものです。この式をみていると一定の規則があることがわかります。それをまとめるとつぎのような形に書けることがわかります。
\[\frac{\partial}{\partial x}\left (p\frac{\partial \phi}{\partial x}\right )+\left (k_0^2 q-\beta^2 \right )\phi =0\]
ただし、TEモードについては \(p=1\)、\(q=n^2 \)、\(\phi = E_y\) 、TMモードについては \(p=1/n^2 \)、\(q=1\)、\(\phi = B_y \) とします。この
\[(\Delta^2 +A^2)f(x,y,z)=0\]
という形の2階偏微分方程式をヘルムホルツ(Helmholz)方程式と呼び、波動方程式など物理学でよく現れる形の方程式です。このため解の関数形は13項で述べたように定まっています。ただし \(\Delta^2\) はラプラシアン、\(A\) は定数です。13項(4)式は当然、この形になっています。
この波動方程式から得られる固有値方程式は13項(10)式や(12)式のように示されますが、これも規格化することにより、統一的に書くことができます。この規格化をするためにつぎのパラメータを定義します。
\[V=\frac{\pi}{\lambda}(2a)\sqrt{n_1^2 -n_2^2}\]
\(V\) を規格化周波数と呼びます。\(2a\) は導波路コア層の厚み、\(n_1\) はコア層の屈折率、\(n_2\) はクラッド層(の一方)の屈折率です。また
\[b=\frac{n_{eff}^2 -n_2^2}{n_1^2 -n_2^2}\]
を規格化伝搬定数と呼びます。\(n_{eff}\) は等価屈折率です。さらに
\[a=\frac{n_2^2 -n_3^2}{n_1^2 -n_2^2}\]
を非対称性の尺度とします。\(n_3\) は他方のクラッド層の屈折率です。\(n_2 =n_3\) の対称導波路ならば \(a=0\) となります。
この \(V\) と \(b\) を用いて13項(10)式の固有値方程式を書き直すと
\[V\sqrt{1-b}=(m+1)\pi -\tan^{-1}\sqrt{\frac{1-b}{b}}-\tan^{-1}\sqrt{\frac{1-b}{b+a}}\]
となります。\(b\) と \(V\) の関係は13項の図13-2を規格化したものとなります。なお、13項(12)式のTMモードに対する式は \(n_2^2/n_1^2\)、\(n_3^2/n_1^2\) が残った形になります。