光デバイス/発光ダイオード
5.発光ダイオードの課題
発光ダイオードは原理的にはpn接合に電流を流せばよいので、基本的な構造は単純です。しかしその性能を向上させるためにはいろいろな課題を解決する必要があります。それを以下に整理します。
(1)高効率化
発光ダイオードはいかに強い光を出せるかが重要な課題になります。薄暗いところでしか光っているのが分からないようでは使える場面があまりありません。太陽の光があたる明るいところでも光っているのがはっきりわかるくらい強く光れば、屋外の信号機やディスプレイにも使えます。ヘテロ接合は強い光を出す工夫の一つとして重要な技術です。発光ダイオードにはできるだけ少ない電流でできるだけ強い光を出したいという基本的な要求があります。これは注入した電子と正孔をいかに無駄なく再結合させ、発光に変換するかという課題になります。解決手段には使用する結晶の質の向上やLEDチップの構造的な改良などがあります。チップ構造の問題は、再結合を促進するための構造と発光した光をチップ外にできるだけ取り出すための構造とがあります。(2)発光波長範囲の拡大
発光波長は材料のバンドギャップエネルギーで決まりますから、第1には高品質の結晶ができる材料を使用できるかという課題になります。しかし青色あるいは紫外光を発光するLEDが実現したため、これを蛍光材料によって波長変換する手段が広く使われるようになり、波長の選択範囲が大きく広がりました。(3)長寿命化
半導体素子の寿命を縮める要因の一つは温度です。動作温度が高温になるほど、寿命は短くなります。この課題は高効率化の課題と密接に関係しますが、その他に発生した熱をいかに逃がすかという放熱という手段もあります。このほか、LEDの故障原因として静電気放電の問題があります。(4)実装の課題
LEDはチップのままでは実用的に使うことはできませんので、パッケージに実装して使うのが一般的です。この実装は上記(1)~(3)を解決する手段にもなるので重要です。パッケージの構造によって光の取り出し効率は大きく左右されます。また蛍光材料はパッケージと一体にして設けられることが多く、パッケージ構造に大きく依存します。さらに放熱や静電気対策もパッケージ構造に依存します。この他、外部へ取り出す光を広く拡散させるのか、逆に集光するのかという光学的要求に応えるのも主としてパッケージの役割です。以下にこれらの課題に対する解決手段を紹介していきます。