電子デバイス/バイポーラトランジスタ

2.電気信号の増幅とは

 トランジスタとは何かというと増幅機能がある3端子の素子ということになりますが、それでは増幅作用とは何でしょうか。図2-1のように何か中身のわからない箱(ブラックボックスといいます)があって、これに4つの端子がついているとします。いま端子1と2の間に電源を繋いで電圧vをかけたところiという電流が流れたとします。

 このとき端子3と4の間に抵抗値Rの抵抗器を繋いだところ、電流iが流れ、端子3と4の間、つまり抵抗器Rの両端に電圧vが発生したとします。このときvとiの積P(=v×i)よりvとiの積P(=v×i)が大きければ、電力が増幅されていると言えます。電圧と電流をかけたものが電力ですからP、Pは電力です。

 こんなことができるのでしょうか。例えば図2-2のようにブラックボックスの中に抵抗器を繋いだ簡単な回路が入っているとします。これでは抵抗値をどう変えようがPよりPを大きくすることはできません。また回路をどう複雑に変えても、抵抗器以外の部品を使ったとしても無理です。トランジスタを使えばできるという話ではないのかということですが、それには重要な条件があります。

 その条件とは電源を繋ぐということです。入ってくる電力P以外に電力を入れてやることが条件です。トランジスタとは電源から入ってきたエネルギーPの一部をPにうまく加え合わせる機能がある素子なのです。

 図2-3のようにブラックボックスの端子1、2(入力端子と言ってもよい)に入る電力Pとは別の電力Pが供給されてはじめて端子3、4(出力端子)にPより大きなPが出てきて増幅が起きます。エネルギーは無駄が少ないほどよいのですが、実際にはブラックスボックスに入るエネルギー(P+P)がすべてPになるわけではなく、一部は無駄になります。ですからブラックボックスに出入りするエネルギーをみると決して増えておらず、普通は減っています。この点に注意してトランジスタの動作を見ていく必要があります。

 なお、図2-3のブラックボックスは入力、出力合わせて4つの端子があります。普通は図2-2のように端子2と端子4は繋いで共通の端子とした回路にして端子数を減らします。そうすると3端子のトランジスタ1個がこのブラックボックスの中身とみることもできます。