産業/信頼性
5.故障分布関数

 前項で導いた式に具体的な関数を当てはめてみましょう。 まず信頼度関数 \(R\left ( t\right )\) は数値例であげたように通常、時間とともに減少するので、    \[R\left ( t\right )=\exp \left ( -\frac{t}{t_{0}} \right )\] のように指数関数を仮定してみます。\(t_{0}\) は時定数に相当します。故障分布関数 \(F\left ( t\right)\)は    \[F\left ( t \right )=1-R\left ( t \right )\] と表されます。このとき故障確率密度関数 \(f\left ( t\right )\) は前項の定義式より    \[f\left ( t \right )=-\frac{\mathrm{d} R}{\mathrm{d} t}=\frac{1}{t_{0}}\exp \left (- \frac{t}{t_{0}} \right )\] となります。また故障率関数 \(\lambda \left ( t\right )\) は    \[\lambda \left ( t\right )=\frac{f\left ( t\right )}{R\left ( t\right )}=\frac{1}{t_{0}}\] となり、時間に依存せず一定となることがわかります。つまり故障率が一定の偶発故障の場合は、信頼度関数を、一例として指数関数で表すことができることがわかります。ここで \(\lambda \) の逆数、すなわち \(t_{0}\) が、2項で説明した平均故障寿命(MTTF)または平均故障間隔(MTBF)に相当することになります。この \(t_{0}\) は信頼度関数の値が   \[R\left (t_{0}\right)=\frac{1}{\mathrm{e}}=0.368\] となる時間を意味します。

 別の考えとして前の数値例で \(R\left ( t\right )\) が長い時間経過した後で減少する場合、\(f\left ( t\right )\) がピークをもつような結果が得られていました。これに着目して    \[f\left ( t\right )=\frac{1}{\sqrt{2\pi }\sigma }\exp \left [ -\frac{1}{2}\left ( \frac{t-\mu }{\sigma } \right)^{2} \right ]\] のように \(f\left ( t\right )\) が正規分布であると仮定してみます。ここで \(\mu \) は平均値、\(\sigma \) は標準偏差に相当します。このとき \(F\left ( t\right )\) は    \[F\left ( t\right )=\int_{0}^{t}f\left ( t\right )\mathrm{d}t=\frac{1}{\sqrt{2\pi }\sigma }\int_{0}^{t}\exp \left [ -\frac{1}{2}\left ( \frac{t-\mu }{\sigma } \right )^{2} \right ]\mathrm{d}t\] となります。正規分布の性質についてはここでは省略しますが、この場合はある時間に集中して故障が起こることが示されていて、摩耗故障に相当することがわかります。

 以上のように故障を表す関数は場合によってちがうことになります。これは不便なので統一的な関数で表せるように考えられたのがワイブル分布です。ワイブルというのは人名で、この関数を考案したスウェーデン出身のE. H. W. Weibullに因んでいます。

 ワイブル分布においては \(f\left ( t\right )\) を    \[f\left ( t \right )=\frac{m}{\eta }\left ( \frac{t-\gamma }{\eta } \right )^{m-1}\exp \left [ -\left ( \frac{t-\gamma }{\eta } \right )^{m} \right ]\] のように表します。\(\eta \)、\(m\)、\(\gamma \) はいずれも定数です。\(R\left ( t\right )\) は    \[R\left ( t\right )=\exp \left [ -\left ( \frac{t-\gamma }{\eta } \right )^{m} \right ]\] となり、\(\lambda \left ( t\right)\) は    \[\lambda \left ( t\right )=\frac{m}{\eta }\left ( \frac{t-\gamma }{\eta } \right )^{m-1}\] となります。ここで \(m\) を形状パラメータと呼んでいますが、この \(m\) をパラメータとして \(R \left ( t\right )\)、\(f \left ( t\right )\)、\(\lambda \left ( t\right )\) を計算してみると図5-1(a)~(c)のようになります。

 \(m=1\) のとき \(R \left ( t\right )\) は指数分布に一致し、\(m=2\) のときは正規分布に一致します。前の数値例と比較すると \(m \lt 1\) のときは初期故障、\(m=1\) のときは偶発故障、\(m \gt 1\) のときは摩耗故障に相当していることがわかるかと思います。