光デバイス/受光素子

24.撮像素子

 ここからは撮像素子を取り上げます。撮像素子とはデジタルカメラ、デジタルビデオカメラにおいて光信号からなる画像を取り込み、表示装置に画像を表示できるように電気信号に変換するデバイスです。

 もちろんここで取り上げるのは半導体デバイスですが、この半導体撮像素子が開発されてはじめて小型のデジタルカメラが実現し、携帯電話(スマートホン)に写真撮影機能を加えることが可能になりました。

 一方、ビデオカメラに関してはテレビ画像を撮影する撮像素子が20世紀の前半には開発されていました。これは半導体素子ではなく撮像管と呼ばれる真空管の一種です。光検出素子としてはやはり真空管の光電子増倍管があることは17項で紹介しましたが、撮像管にも長い開発の歴史があります。ここでは少しだけ半導体撮像素子が生まれる前の撮像素子の歴史に触れておきます。

 撮像管のアイデアはすでに1920年代に提案されたそうですが、実用的なものができたのは1940年代で以後30年程度、半導体撮像素子に置き換えられるまで、テレビ画像の撮影のために使われてきました。

 最初に実用化された撮像管はイメージオルシコン(Imege Orthicon)と呼ばれるもので、1939年にアメリカのRCA社によって開発されました(1)。さらに特性の改善されたビジコン(Vidicon)と呼ばれる撮像管がこれもRCA社によって世に出されました。その後、日本の東芝、日立、松下、ソニー等々のテレビ受像器メーカのほぼ全社が開発に関わりました。

 これらの撮像管の動作原理は基本的に同様です。ここではビジコンを例に説明します。図24-1(a)が撮像管の断面図です(2)。撮影する画像の光情報は左側から管の受光面であるフェースプレート(ガラス板)に入射します。その後にターゲットと呼ばれる光電変換面があります。この光電変換面は16項で取り上げたフォトコンダクタで形成されています。

 1940年代といえばまだ半導体の黎明期で、シリコン半導体の技術もまだ存在しません。しかしフォトコンダクタ(光伝導体)はとくに良質の結晶などを必要とせず、光を照射すると電流が流れる材料は古くから知られていましたので、そのなかから材料が選択されました。

 ビジコンには可視光に感度がある材料として三硫化アンチモン(Sb)が使用されています。図24-1(b)に示すように、この層に2次元画像を表す光が入射すると光強度の強さに応じて電子-正孔対が発生します。つまり2次元画像情報が光伝導層に書き込まれたことになります。

 問題はこの2次元情報をどのような手段で読み出し、画像を表す電気情報として使えるようにするかです。そのために着目されたのが2次元画像を表示するために使われるいわゆるブラウン管、すなわち陰極線管(CRT)です。その原理は陰極線(電子線)を画像情報で変調し、蛍光体面上を2次元走査することにより画像を表示するというものです。  これはいわば画像の出力に陰極線の走査を利用したものですが、2次元画像の入力にも陰極線の走査を利用したのがほぼすべての撮像管の原理です。上記のように光伝導体の書き込まれた情報である電子-正孔対は外部に電気的に接続されないとそのまま光伝導体中に留まりやがて消滅するだけですが、ある部分に陰極線が当たると電子が供給され、電気接続がされたのと等価な状態となり、陰極線照射面と反対側に設けた電極に正バイアスがかかっていれば、帯電量にしたがって電流が流れるので、その点の画像情報となります。陰極線を面全体に走査すれば2次元画像が電気信号として読み出せるというわけです。

 光伝導体層は結晶ではないので、エネルギーバンド図はあまり適当ではないのですが、電子と正孔の流れはエネルギー的に表せば、図24-1(c)のように表せます。

 この撮像管の原理を等価回路で示すと図24-2のようになります。陰極線の走査は連続的なものですが、光伝導体面を画素に区切ったと仮定すると、各画素ごとに接続をスイッチで切り換えることに相当します。光伝導体は抵抗とコンデンサの並列接続で表せるとします。抵抗は発生したキャリアによって生じる電気伝導を示し、コンデンサはキャリアが発生していない場合を示します。各画素に陰極線がやってきたことをスイッチがオンになったことで示せば、各画素の状態を陰極線の走査に従って読み出せることになります。  以上が半導体撮像素子が登場する以前の撮像技術の概要です。このことからわかることは2次元画像の取り込みが半導体による光電変換技術であることは、初めから変わりなく、これしかないということです。したがって技術の焦点は取り込んだ2次元画像情報をいかに簡単、高速に電気情報として読み出すかということになります。

 この読み出し技術は光とは関係なく、電子デバイス的機能となります。この点で、撮像素子を受光素子の一環としてここで取り上げるのが適当かどうかには少し疑問が残ります。この後の項で説明するように半導体撮像素子はほとんど半導体集積回路技術で製造されます。この点に着目すれば半導体集積回路の一種として取り上げる方が適当かもしれません。このようなどちらとも言えない中間的性格をもっているのが半導体撮像素子であるということだけお断りしておきます。

 日本で初めてテレビを作ったのは「イ」の字の画像で知られる高柳健次郎氏であるのは有名な話です。これは1926年のことです。ということは撮像管もまだ存在しない時代のことであり、どのように画像を撮影したのかが気になります。答えは機械的な方法でした。螺旋に沿って多数の穴を開けた円板を回転させ、画像を取り込む方法が用いられました。

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(1)Wikipedia(English) "Video Camera Tube" 

(2)米国特許US2963604号

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