光デバイス/受光素子

14.超格子アバランシェフォトダイオード

 1μmより長い波長帯用で過剰雑音の少ないアバランシェフォトダイオードを実現するために考案されたのが超格子アバランシェフォトダイオード(超格子APD)です。まず構造の具体例を図14-1に示します(1)。n型InP基板上にn型InP層、超格子層、p型In0.53Ga0.47As層、p型InP層が順に積層されています。この両面に電極を付けてpin構造のフォトダイオードとしています。

 超格子層は薄いn型InP層(膜厚40nm)とn型In0.53Ga0.47As層(膜厚60nm)が各50層積層されています(図は実際の層数を示していません)。この素子は一般に超格子APDと呼ばれます。

 この超格子層に逆バイアスをかけた状態のエネルギーバンド図が図14-2に示されています。InPに比べるとIn0,53Ga0,47AsはバンドギャップエネルギーEgが小さいので図のようなバンド構造になります。ここで注目するのはこの2つの材料の伝導帯同士の差ΔEcと価電子帯同士の差ΔEvです。図のように両者は等しくなくΔEcの方が大きくなっています。これがなぜかというのは説明が難しく、材料の性質というしかありません。

 このような状態のとき、電子のイオン化の方が起きやすくなります。InPの伝導帯にあった電子がInGaAsの伝導帯に落ちるとΔEc分だけエネルギーが高い状態になります。このエネルギーが失われるまでは電子は通常より高速で移動し原子に衝突するので、イオン化はより起きやすくなります。

 正孔の方はΔEvが小さいので、InGaAs層内に入ってもエネルギーはそれほど高くなく、この違いによって超格子層内でのイオン化の割合は電子の方が高くなります。この違いによってInGaAs単層で受光する場合より超格子を用いた場合の方が過剰雑音が減ることになります。これが超格子APDの原理です。

 超格子の材料の組み合わせや構造はその後いろいろな工夫がなされています。例えば、Al0.45Ga0.55As/GaAsやIn0.47Ga0.53As/Al0.7In0.3Asの組み合わせなどで、ΔEcとΔEvに差を出せることが示されています(2)。とくに後者のInGaAsとAlInAsの組み合わせはその後よく使われるようになっています。

 ここで用いられる化合物半導体の超格子層はその構造としては他で量子井戸層と呼んでいるものを同じです。この2つの呼び方の区別には一応理由があります。超格子は2つないしそれ以上の物質が非常に小さい単位の結晶として繰り返し構造を作っているものを意味します。一方、量子井戸の方は構造的には超格子と同じですが、とくにエネルギー準位に着目し、伝導帯や価電子帯のエネルギーに現れる量子効果に着目する場合に使われます。APDの場合は量子準位には関係がないので超格子層と呼ぶ方が適当と思われますが、量子井戸層と呼んでもまちがいではないでしょう。

(1)特開昭58-061679号

(2)特開平02-058276号

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