電子デバイス/絶縁ゲート電界効果トランジスタ

 

19.まとめ

 これまで説明してきた通り、IGFET集積回路の微細化は大きな意味をもっています。そこで20世紀後半は微細化に向けた開発が集中的に行われました。その指針となったのがよく知られるムーアの法則です。

 ムーアの法則はインテル社の創業者の一人であるゴードン・ムーア(Gordon E. Moore)によって1965年に唱えられました(1)。これは1チップ上に集積されるトランジスタの数が 18ヶ月(1年半)で倍増するという、トランジスタの集積化、微細化の将来予測を示す「法則」です。数年後には18ヶ月より24ヶ月(2年)で倍増の方が実情に合うと修正されています。

 式で書くと、n年後のトランジスタ数の倍増率pは   \[p=2^{n/2}\] となります。

 ムーアの法則は初期数年の進展をもとに将来へ外挿した経験則ですが、実際のマイクロプロセッサにおけるトランジスタ数の推移は何と50年近くもこの法則に概ね沿って増大してきました。その変化の概略は図19-1に示す直線で示されます。

 しかし、2010年代半ば以降、どうもこれ以上はこの法則が成り立つのは無理ではないかと言われるようになっています。チップ上の最小のパターン寸法が10nmに近づくまでになってきたからです。数nmといえば原子数個分のサイズに相当するわけで、チャンネル長や配線の線幅がこのようなサイズになるとデバイスとしての機能を果たすのは難しくなると思われます。

 この先、トランジスタの原理から変えていかないと微細化、集積化の課題は解決できない段階にきているように思われます。このような課題に挑戦する研究はすでにいろいろ試みられていますが、どんなデバイスが次世代を切り開くかはまだ見えておらず、今後の進展が期待されます。

(1)G.E.Moore, "Cramming more components onto integrated circuits", Electronics Vol.38, No.8 (1965)