光デバイス/発光ダイオード

6.発光ダイオードの基本構造

 ここからLEDの具体的な話に入っていきます。まずはじめにLEDの基本的な素子構造について紹介しておきます。半導体素子はその心臓部である半導体層構造をもっていますが、おおよそどの素子でもそれ以外の要素として基板と電極をもっています。LEDも例外ではありません。

 基板は発光層など薄い半導体層を支える役割をしますが、電流の流れや光の取り出しにも影響を与える重要な部分です。電極は発光を起こさせる電流を素子に流し込むために必須の部分ですが、光の取り出しにも影響を与えます。

 LEDの素子構造は基本的には縦型と横型の2種類です。この呼び方は必ずしも定着していませんが、ここでは便宜上この呼び方を使います。

(1)縦型  図6-1に示すように基板の上に半導体層を形成し、基板の裏面と半導体層の表面に電極を着けたタイプです。2つの電極の一方がp型半導体層側に設けられ正電極(アノード)となり、他方がn型半導体層側に設けられ負電極(カソード)になります。基板に電極を着けるため、基板は導電性である必要があります。普通は光は半導体層側から取り出されますが、基板が発光に対して透明であれば、基板を通して裏側に光を取り出すことも可能です。

(2)横型  図6-2に示すように半導体層側に正負の電極が設けられたタイプです。基板に電流を流す必要がないので、基板が絶縁体である場合に有効な構造です。片側に電極を着けるため、下側の半導体層と電極の接触には工夫が必要です。(a)のように半導体層を上層から発光層まで一部除去すれば、下側の半導体層が露出するので、その表面に電極が着けられます。

 (b)のように上層を除去せずに穴をあける場合もあります。穴の中に金属などを入れて貫通電極とし、下層の半導体側の電極を作ります。半導体層表面に段差ができないという利点がありますが、貫通電極は上層の半導体と絶縁しなければならないので、工程が複雑になる難点もあります。

 光は半導体層側に取り出すこともできますが、電極が邪魔になるので、基板に透明な材料を用いて基板側から取り出すのも有効です。この場合、チップをひっくり返し電極を下側にする実装方法が便利です(フリップチップ実装といいます)。

 基板や電極の材料については他のデバイスとも共通する問題ですから、別に取り上げることにします。