光デバイス/発光ダイオード

18.発光ダイオード材料の具体例(その1)

 前項では、AlGaAsを例にあげて直接遷移から間接遷移への移り変わりの微妙さについて説明しました。ここではもう少し具体例を並べてみたいと思います。

1.AlGaInAs

 まずAlGaAsにさらにもう一つのⅢ族元素のInを加えた4元化合物半導体に着目します。半導体に限らず、このような多元化合物の組成を示すのに、図18-1のような正三角形など多角形の図が便利です。

 この場合、Ⅴ族元素のAsが共通であり、3角形の3つの頂点はそれぞれAlAs、GaAs、InAsの各2元化合物を表します。3角形の3本の辺上は3元化合物に対応します。例えば右側の斜めの辺はAlGaAsを表し、目盛りxはAlの組成を表します。一番下がAl組成xが0のGaAsに相当し、上へいくに連れてAl成分が増加し、一番上の頂点ではxが1、すなわちAlAsとなります。

 この図(原資料は特開昭63-150982)ではIn組成を基準にとり、4元化合物を (Al<sub>x</sub>Ga<sub>1-x</sub>)<sub>y</sub>In<sub>1-y</sub>As というふうに書き、xとyをとっています。組成の記号のとり方は、第1元素をx、第2元素をy、第3元素を1-x-yとする場合もあります。上記のようなとり方の場合、Inの含有量はyですが、Alの含有量はxではなく、xyである点に注意が必要です。

 図で水色に塗った部分が間接遷移となる領域です。これは理論計算と実験により定められたものです。3つの2元化合物のうち、AlAsだけが間接遷移型ですから、その周りの組成が間接遷移型となるのは想像できます。

 各頂点の2元化合物のそばに青字で書いてある数字はeV単位の方がバンドギャップエネルギー、nm単位の方が格子定数です。これらは3元化合物を表す直線上では、基本的には組成に比例して変化すると考えてよいので簡単に計算できます。例えばy=0.5のIn<sub>0.5</sub>Ga<sub>0.5</sub>Asではバンドギャップエネルギーは0.89eV、格子定数は0.586nmと計算されます。

 4元化合物も含めて、バンドギャプエネルギーが1.6eVと1.0eVになるのは図中の破線で示した直線上の組成のときです。1.6eVの場合はInを含まないAlGaAsでもx=0.2くらいにすれば実現できますが、1.0eVの場合はGaAsのバンドギャップエネルギーより小さいので、Inを含むことが必須となります。

2.InGaAsP

 つぎに古くから可視光発光材料として用いられてきたGaAsPを例にあげます。今度はⅤ族元素が2種類になります。上記特許を参考に3族のInも含めた4元化合物のInGaAsPで考えます。Ⅲ族とⅤ族が2種類ずつなので、ベースになる2元化合物は4種類となりますから、組成図は図18-2のように四角形(正方形)になります。

 ここでは In<sub>1-x</sub>Ga<sub>x</sub>As<sub>y</sub>P<sub>1-y</sub> と書き、Ga組成をx、As組成をyとしました。

 4つの2元化合物のうち、GaPだけが間接遷移型ですから、図のようにその周りだけが間接遷移型となります。GaAsP(図の正方形の上の辺上)では、x=0.5より小さい組成で間接遷移になります。バンドギャップエネルギーにすると1,84eVより小さい場合となります。

 InGaAsPと言えば、InP基板に格子整合した赤外域の発光素子が作れることが知られています。図の左下のInPの頂点から右上方に引いた直線上ではInPと格子定数が等しくなります。一方、バンドギャップエネルギー0.95eV(波長1.3μmに相当)と0.8eV(波長1.55μmに相当)となるのは図中の破線上です(この場合少し直線関係からは少し外れた曲線となります)。この直線と曲線の交点となるように組成x、yを選べば、InP基板に格子整合した波長1.3μm、1.55μmの発光が得られることになります。

3.AlGaInP

 もう一つの例として赤色発光ダイオードの材料であるAlGaInPを考えます。これはⅤ族がP、1種の4元化合物ですから、図18-1の場合のAsをPで置き換えたものになります。図18-3が組成図です(原資料は特開平06-268318)。x、yの取り方も同様に   (Al<sub>x</sub>Ga<sub>1-x</sub>)<sub>y</sub>In<sub>1-y</sub>P とします。

 この場合、InPだけが直接遷移型で、GaPとAlPは間接遷移型となりますから、図のように直接遷移の範囲はInP周囲のやや狭い範囲に限られます。

 AlGaInP発光ダイオードはGaAs基板に格子整合する条件で作られます。図18-3のGaInPを示す下の辺で考えると、GaAsの格子定数0.565nmに等しくなるのは大体y=0.5のときです。GaPとAlPの格子定数は等しいので、GaAsと格子定数が等しい線はGaAlPの辺に平行になります。図にバンドギャップエネルギーが2.0eV(波長620nmに相当)の線を書き込んでありますが、この波長の発光を得るには、2つの線の交点になるように組成x、yを選べばよいことになります。

 直接遷移、間接遷移の範囲の例をあげましたが、少し触れたように格子整合条件も発光ダイオードの材料を選定するのに重要な条件です。次項でこの点を考えます。

4.AlGaInN

 もっとも新しく実用的に使われるようになった材料系ですが、現在ではもっとも重要な材料系であると言ってもよいかと思われます。

 この材料系はAlN、GaN、InNのいずれもが直接遷移型です。そこで上のような図は省略し、次項以降で別の観点から改めて取り上げることにします。