科学・基礎/結晶の話

13.まとめ

 結晶は自然界において作られる場合も人工的に作られる場合も、分子の種類が決まるとその構造が決定してしまいます。必ずしも一つの構造でなく、条件によって複数の構造をとる場合もありますが、自由に形を変えるものではなく、人為的にコントロールできるものでもありません。

 長い歴史をもつ結晶学は、まずは自然界に存在する多様な鉱物の結晶形を分類することから始まりましたが、やがてX線回折という強力な分析手段を得て、物質ごとに正確な結晶形が特定できるようになりました。

 以上の各項では原子や分子がどのような力で結びつけられ、どのような形の結晶を作っているか、それらはどのような規則性をもって配列しているかについて説明し、半導体結晶の例などを取り上げて説明しました。

 この規則性は対称性という視点で整理ができることにも触れましたが、さらに数学の群論の助けを借りて結晶の分類が進み、特別な記号を用いて表示ができるようになっています。ただしここでは説明が煩雑になりわかりにくくなるのを避けるため、群論を用いた議論には立ち入りませんでした。

 このように存在する結晶の構造の整理は非常に詳しく明らかになっています。しかし逆にある特定の原子や分子がどのような結晶を作るかを予測できるでしょうか。

 複数の原子が結合して分子をつくるとき、どのような結合を作ってどのような分子構造をとるかは分子軌道法という近似解析法を用いて計算することが可能です。しかしさらにそのような構造の定まった分子がどのように規則配列してどのような結晶形を作るかを予測することはなかなか難しいようです。これは12項で触れたように結晶成長のメカニズムが複雑で、特定の分子がどのような形態の結晶になるかを解析するのが容易でないことによると思われ、今後の課題です。

 最後に参考にした書籍を2冊挙げておきます。ともに一般向けに結晶について基本的なことを解説していますが、つぎのような特徴があります。(1)はとくに結晶の対称性について詳しく説明しています。基本構造に手書きのト音記号が使われているのが面白いです。(2)は結晶成長に重点を置いています。縦書きで一般書の装いですが、内容はかなり高度な内容にまで立ち入っています。40年近く前に出版された本なので、その後、さらなる進展があったかと思われます。

(1)平山令明「結晶とはなにか」講談社ブルーバックス (2012)

(2)黒田登志雄「結晶は生きている」サイエンス社(1984)