電子デバイス/バイポーラトランジスタ

13.まとめ

 トランジスタの発明が現在のエレクトロニクス社会の発展の礎になったことは間違いありません。そのトランジスタは現在では電界効果型(とくに絶縁ゲート型、IGFET)がもっとも多く使われていますが、歴史的にはバイポーラ型が先に実用化されました。

 この両者は電子回路においてはほぼ同等の機能を実現できます。IGFETの方がよく使われるようになった理由は、集積化のしやすさにあると思われます。IGFETは材料的にはすべて半導体はシリコン、絶縁膜は酸化シリコン(SiO)の組み合わせでできています。このため、この材料系に特化して微細加工技術が進展し、近年ほぼ原理的に可能な限界に達したようです。

 一方でバイポーラ型はシリコンが中心ではありますが、この章でも取り上げたようにGaAsやGaNなどⅢ-Ⅴ族化合物半導体などシリコン以外の材料への広がりが期待でき、これにより構造的にはヘテロ接合型が実現できることになります。材料を選ぶことによって、高速、高耐圧、高温動作などシリコン系では実現できない性能の改善が図れる可能性が高まります。限界に達したシリコン系のIGFETの先に来るものとしてバイポーラ型の発想が出てくるかも知れません。

 この章では、単体素子について、そのごく基本的な部分のみしか敢えて取り上げていません。性能改善のため、構造的な工夫は多く行われています。高速化などを目的とした素子構造の改善などは基本的な数式による解析の範囲を超えて、コンピュータシミュレーションによって行われる場合も多く、それらを取り上げるのは止めました。ただしバイポーラトランジスタを理解するうえで、基本的な数式による考え方を知ることは重要であり、これは別途取り上げる予定です。

 トランジスタはそれ単体ではなく、複数のトランジスタやその他の要素を組み合わせて回路を構成してこそ機能を発揮します。このためやはり回路の問題が重要です。しかしここでの目的は半導体デバイスそのものを理解することですので、回路については最小限に留めました。なお集積回路デバイスについては章を分けて取り上げることにします。